発想法などに関する書籍レビュー

 発想法や情報整理、文章記述法に関連する書籍の個人的レビュー。まだ書いてないけど読んだものは予告も兼ねてタイトルと画像だけ掲載しておきます。画像をクリックするとAmazonの該当ページが開きます。

発想法 ―創造性開発のために(川喜田二郎著、中公新書)

発想法

 おそらく発想法として国内ではもっとも有名なKJ法の初の解説書籍。余談だが、KJとは著者のイニシャルを取ったもので、初めて聞いた時、僕は「自己顕示欲の表れかな」と思ったが、そうでもないらしい。今では「まあ、そういうのもありか」と思うようになった。自分の名前に由来した手法が広まるというのも研究者としては本望だろう。

 KJ法の骨子は「データをして語らしめる」、トップダウン型のデータ分類ではなく、データ相互の類似性からデータの整理を行っていくということである。大学の演習でこの方法を習った時には難しく考えすぎていて、データ相互の相似・類似で整理していくというのが難しかった。しかし今現在、改めて読み返してみると、非常に合理的な方法であると感じるようになっていた。おそらく素直にまとめていくということは、それ自体が難しいのではなく、どれだけ既存の概念にしばられているのかによるのだろう。

 しかしKJ法の(そしておそらくそれ以外の発想法も)問題点は、「面倒くさい」「手間がかかる」ことだろう。少なくともそう感じさせる部分にあろう。実はそう感じるのは実際には試していないか、すこしだけかじってみた者に多い。(一般の)発想法の著者だれもが「習熟することで自然と手が動くようになる」と繰り返し強調しているのだが、なかなか通じないと言うところも残念ながらある。かくいう僕も昔はそう感じていた。今、発想法に興味と必要性を感じるようになってから読んでみると、また違った考えが浮かぶようになったが。これにも関連するが、かの「超」整理法の野口悠紀雄氏はKJ法に批判的である。これは一部は妥当であるが、僕が見るところ、KJ法や発想法の需要に対する誤解によるところもあるようだ。これについては別の本のレビューにて。

 KJ法本体の内容と活用はともかくとして、この本自体がなかなか名著であると思う。研究という仕事の既成概念を、書斎科学と実験科学に分けて捉え、さらに野外科学というフィールドの存在と認識の必要性を提唱している。またその3種類の概念にそって研究という仕事の流れを整理し直している前半は、すっきりとして読みやすく、かつ納得がいくものでもあった。実はKJ法の説明そのものだけではなく、こういった概念の整理にもこの本の価値があると思う。

 今となっては30年以上前の本だが、研究に携わる者、発想法に興味がある者は、必ず手に取ってみるべき名著。

 その他、興味深いキーワード等。

(2003/08/05)

続・発想法 −KJ法の展開と応用(川喜田二郎著、中公新書)

続・発想法

 上記「発想法」の続編。サブタイトルの通り、KJ法の利用方法についてより深く追求している。前著に対して、より技術的な内容について事細かに書かれているのが特徴。そのため本としては読んでいて飽きが来てしまったが(苦笑)。まあ、これはこの本の性格上仕方なかろう。KJ法を理解し使いこなしてみたいと思ったら、2冊合わせて読むべき内容となっている。

 前著の2年ほど後に書かれただけあってKJ法の理論自体も深まっていると感じる。特に問題発見から解決までの流れをモデル化した「W解決」の各段階を6段階と整理し、各段階に応じた「累積KJ法」の実践論については執念が感じられる。

 ただ、事細かに書かれているが故に読んでいて「KJ法って面倒くさい方法なんだ・・・」と感じてしまいかねない。個人的に思うに、KJ法を身につけるなら、まず前著だけを読んで2,3度実践してみる。そしてKJ法について自分なりに「こういうことかな」と感じるところを掴んでからこの本を読むといいと思う。

 この2冊を読むまでKJ法は知っていたし使ってみたことも数度あったが、改めての読後はまた違った解釈・理解ができたと思う。その上で考えるとKJ法は非常に評価するべき方法であると思う。ただ、必ずやった方がいい方法かと言われると「否」である。一方で知っていると精神活動に役立ってくれそうなので、身につける価値はある。これらについてはKJ法批判派の意見を合わせて検討してみると面白そうだと思っている。後日、項を改めて書く予定。

(2003/08/19)

ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル(照屋華子・岡田恵子著、東洋経済新報社)

ロジカル・シンキング

三色ボールペン情報活用術(齋藤孝著、角川ONEテーマ21)

三色ボールペン情報活用術 本としては主題の応用例の繰り返し繰り返しで食傷するが、三色ボールペンによる色分けで情報活用というアイディアそのものは面白い。要は情報を3種類に捉えようという主張が第1。そしてそれに三色ボールペンで色分けすることで認識を明らかにしようというのが第2。つまり

  1. 客観的に考えて重要な情報は赤
  2. やや重要な情報は青
  3. 主観的に興味深い、面白い情報は緑

 このような動作を通じて、積極的に情報を頭に取り込みましょう、という内容。特に緑の活用が大事で、緑の情報を深く追求することが発想などにもつながるという主張である。

 考えてみるに、人が分けやすい3種類という明確な分類、主観をうまく利用しよう、という2点を明確に打ち出したところが、この本の良い点であろう。

 (前著の主題である)本を読む時ばかりでなく、本書ではその他の情報も対象にすべきとしている。特にスケジュールも3色に分けて記入しようというところはよい。SL-C760で使っているdatebook2ではカテゴリ別に色分けができるので、早速「重要」「やや重要」「興味」という分類を作って色分けがなされるようにした。今まで仕事の内容で分類していたのだが、数分類以上になると意味がないし、あまり分類ごとに予定やToDoを分けて表示することって無かったわけで。内容で恣意的に分類せず、重要度のみで3種類程度に分けるのは、一般的にいいやり方だと思う。よいアイディアはすぐに真似するべきだろう。しばらく運用した結果は後日追記したい。

(2003/08/07)

書斎がいらないマジック整理術(ボナ植木著、講談社+α新書)

書斎がいらないマジック整理術 著者は現役マジシャン。マジシャンはアイディア勝負の仕事らしい。言われてみればその通りだが、なかなか思い至らない事実ではある。なんとなく、ネタはどこかから仕入れているような気がしていた。失礼な話だ。まして自分で仕事全体の管理をしなくてはならないとなると、これはいろんな工夫を生み出しているのだろう。

 マンション住まいの著者が、自分の固定的な書斎スペースをなくしてしまうにいたる過程で生み出した、様々な整理術。しかし物の整理にとどまらず、むしろ情報整理の工夫に注目すべき本である。一つ一つの工夫はたいしたことはないが(失礼)、その何気ない工夫の積み重ねが有効に機能しているようなのがすばらしい。また、「どこでもデスク」はいい。僕も欲しくなってしまった(僕の場合、そういうのを手に入れるとカミさんに却って怒られそうだが(^^;)。とりあえず著者に倣ってメモ帳を持ち歩くようにしている。このメモ帳と、「三色ボールペン情報活用術」の色分け方法を組み合わせてみているが、今のところなかなか好感触でメモを取れている。

 著者のページはこちら「新・手品師の裏側

(2003.08.26)

考具―考えるための道具、持っていますか?(加藤 昌治著、TBSブリタニカ)

考具 博報堂の公告マンが自分の経験に基づいて語るアイディアの出し方。いくつかの発想法を実際に使ってみるとどうなるという観点から書かれていて良い。良書だと思う。アイディアを出すには、まず材料を集めて頭にインプットしておくこと。そして手を動かすことが基本、実現度を最初から考えない、等々。他のアイディア法の類書に比べて、わかりやすく実践的。方法の解説が平易なのも良。

 特に僕自身が「使ってみよう」「これはいいかも」と思ったものを書き出しておくと、下記のようか。もちろんこれ以外にもたくさん紹介されている。

 これら断片的な方法は知っているし、使っている人も多かろう。しかしわかりやすくこれだけまとまっていると、知的生産にふと閉塞を感じた時に、時々読み返してリフレッシュするという読み方もできると思う。つまり、ただ感心するだけではなく、「自分もやってみよう」という気にさせる書き方が、この本のもうひとつの長所なのだろう。

 著者のページ(多分)はこちら「考具

(2003.08.26)

「超」発想法(野口悠紀雄著、講談社)

「超」発想法

知的生産の技術(梅棹忠夫著、岩波新書)

知的生産の技術 古典に属する書籍だが、一度は読んでみる価値があろう。有名な「京大型カード」が解説されている本。実際に読んでみると実は固い内容ではなくエッセイ風でけっこう読みやすい。

 時代背景は30年以上前なので、今ならPCを利用すれば済むよねという内容が多いのはしかたない。しかしエッセンスは古びてないし、技術的には不自由な中で燃やす知的活動への貪欲さは、道具が発達した現在の目で見ると「よくここまで」と感嘆してしまう限り。自分を省みると、つくづく甘さを感じてしまう。

 内容的には、有名な京大型カードの説明よりもそれが生み出された背景や、読書の方法・文章の書き方に関する部分が面白かった。特に書き方なんてカタカナ書きやローマ字書きを試す追求の姿勢が(現代にはまったく役立たなくて(笑)逆に)興味深い。ワープロが普及した現在、ローマ字書きを普及させようとしている人たちっているのかな。余談ながら、わかちがき推奨の人なら見たことあるが、単語単位で空白が入っているとそこを読んでいるときに頭の中でいちいち一拍置いてしまい、非常に疲れた記憶がある。

(2003.08.26)

アイデアのつくり方(ジェームズ・W・ヤング著、TBSブリタニカ)

アイデアのつくり方 アイディアをいかに生み出すかというハウツー本の元祖と言っていい本。「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と明確にうたい、その生産過程を下記5段階だと看破している。

  1. 資料集め(知識を豊富にため込む)。
  2. 心の中でこれらの資料に手を加える。
  3. 孵化段階。無意識に資料の組み替えを行う。無意識に任せる。
  4. アイディアの発見。「ユーレカ!」という段階。
  5. 現実に合わせてアイディアを具体化・展開させる。

 短い本である。「60分で読める」と帯には書いてあったが、そんなにもかからなかった。しかし類書はこれに具体例を付け加えただけといってもいいくらいの、エッセンスの詰め込まれようである。

(2003.08.26)

人生に奇跡を起こすノート術 −マインド・マップ放射思考(トニー・ブザン著、きこ書房)

人生に奇跡を起こすノート術

本を読む本(M.J.アドラー・C.V.ドーレン著,外山滋比古訳,講談社学術文庫)

本を読む本 原題は「How to read a Book」となっているが,その名の通り,極めてオーソドックスな「読書術の指南書」.しかしここまで理論だってしっかりとHow toに徹した本は類を見ないと思う.

 この本によれば,読書は次の4つのレベルの読書に分けられる.

 これらを段階を追って詳細に定義とその方法を解説している.それぞれの段階の詳細は本書を参照のこととして,感想としては,「いきなり第3段階を目指して挫折することが多いのだな」ということ.点検読書の方法をうまく確立することが,よい多読・速読につながるように思う.シントピカル読書は,これはまさに「研究」の一過程なのだな.そういう意味では思考法の1ジャンルとしての読書法だということをわからせてくれる良書.

 いい意味で正統派のハウツー本.

(2003.09.11)