SL-C760あれこれ

2003年7月にSharp Linux Zaurus(SL-C760)を購入した。せっかくなので簡単なレビューやどういじったかなど。

SL-C760


ハードウェア

質感

 悪くない。上ぶた側表面だけ金属で後は樹脂のようだが、塗装でそれなりの質感に仕上がっている。

 ただ、SL-C760の場合、大容量バッテリが最初から搭載されているために底面の蓋がそれ用のものになっているが、こちらの質感が・・・。なぜこれだけプラスティックそのままの質感にしたのだろう?梨地の白というのはどうもなあ。もともとのシルバーと合わせてくれるほうがよかったな。

 個人的にはもとの筺体のスマートさが好みなことと、やはり裏蓋の質感の違いが気になるため、あえて標準バッテリに代えて使っている・・・(標準の蓋も添付されている)。これはバッテリの持ちとトレードオフ(後述)。

キーボード

 親指タイプで使う分には問題なし。むしろよくできていると思う。机に置いてタッチタイプはさすがに難しいが、この筺体の小ささならそれも当たり前。もとHP200LX使いとしては高評価を与えたい。キー配列も満足いくもの。Ctrlキーがないのはちょっと問題だが、Key Helper Appletというユーティリティで解決可能。

液晶

 これは言うまでもなく美しい。さすが液晶のSharp。「透過型なので屋外では見にくい」という意見もあるが、個人的には十分。バックライトの高度を少し上げれば大丈夫。HP Jornada728は本当に見えなくなっていたものだ・・・。

ターンスタイル

 おもしろい。購入前にはもろくないかと心配していた首は意外にしっかりしている。ビュースタイルで使ってみようとすると、ちょっと厚みを感じる(大容量バッテリ用の蓋を使っていると特に)。ただし個人的には大部分がインプットスタイルで使い、ビュースタイルは読書時程度。一々ひっくり返して使うのが面倒なもので。

バッテリ

 C700で設計した筐体に後付で大容量バッテリを付けたのが、やはり不細工になってる理由だな。かといって標準のバッテリ駆動時間ではやはり短いし、もうちょっと厚くなってもいいから標準で大きなバッテリを添付し、かつ見た目も両立させてほしい。大容量バッテリを付けた時のデザインももっと一体感が増して欲しいなあ。これは今後の機種で改善されるだろうか。

 気になるバッテリの持ちは、感覚的に書くと

 普段使うことを考えると、「AirH"利用で定額通信だったり無線LANだったりと、常に通信状態だぜ!」「音楽再生はけっこう行う。」「動画再生もバリバリ(死語)」なんて人は大容量バッテリで使わないと電池交換の面倒くささが頻繁に起きるだろう。僕は「通信は必要時に接続」「音楽再生はほとんどしない」「メインの用途はPIMと文章入力」というタイプなので、前述の通り見た目のスマートさを優先してわざわざ標準バッテリを2つ購入して使っている。それでも夜の間に充電したりであまりバッテリを交換する必要はない。

 なお、大容量バッテリは既存の充電器は使えないことになっているが、爪をカッターで削ってしまえば充電器にはまるようになる。特に問題なく充電できているようだ。別に爪を削ってもしっかり本体にはまるし、この爪の意味がよくわからないな。

スタイラス

 標準のスタイラスは樹脂製で黒一色だが、あまりにも安っぽく格好悪いので、サードパーティ製のものに取り替え。PDAIR製ボールペンスタイラスを購入した。本来これくらいものが標準で入っていて欲しいな。

 ただ、Zaurus関係は比較的以前の機種の周辺機器が使えるようになっているのが良心的。なので今回のようにMI系のZaurusのオプションが使える。バッテリや充電器なども。CLIEなんてすぐに使えなくなっちゃうもんな。

液晶保護シート

 透明度の高さで評判の高いOverLay Brilliantを貼ってみた。たしかに透明度の高さはぴかいち。ただ、映り込みが激しいのが気になるな。かといって他のを試しに貼り替えてみるには剥がさなくてはならず、無駄にするには値段が高い(^^;。

ストラップ

 現在使っているPHS(DDI Pocket J3002V)についてきた短めでシンプルなストラップを装着。カバーには全然必要性を認められないが(分厚くなってPDAの取扱をじゃまするだけ)ストラップは落下防止・取り出しやすくなるといった理由で便利。

 ストラップホールは両側にあるが、SL-C760(あるいは大容量バッテリを付けたSL-C750)の場合、向かって右側のストラップホールはバッテリの蓋を留めるためにクリップがついて埋まってしまう。これは一部に不評のようで、右側のCFスロットと同じに付けないと不便じゃないかという声もある。ただ、僕は持って使う時には左手にストラップを絡ませた方が使いやすく感じるから、標準バッテリで利用していても左側にストラップを付けている。

その他

ソフトウェア

操作感

 初代は「もっさり」とか評されたようだが、C760は許容範囲内。時折「お、ちょいと待つな」と感じさせられる局面はあるが。PIMを高速起動(つまり常駐)にしておけばたいがい問題なし。

 OSにLinuxを採用したのは面白い。遠い記憶を探ってUNIXの操作感を思い出しつつ使ってみている。時間あわせやLAN設定などがこんな小さなPDAでサーバーを扱うように設定できるのは一種快感(笑)。

 ただ、その状況が魅力的なアプリケーションの登場を妨げているのではないか(後述)。

カレンダー(標準)

 早々にDatebook2に置き換えてしまったためあまり使い込んでいないが、短期間の感覚では悪くない出来だと思う。1ヶ月カレンダーで予定を文字で確認できるのは高精細液晶を搭載した機種ならでは。意外に標準のアプリでそれが可能なPDAはないんだよね。

ToDo(標準)

 これは不満が多い。たとえば

というあたり。データは共有で(PCとの同期のため)インターフェースに凝った置き換えソフトが出てくれないものだろうか。

アドレス帳(標準)

 インクリメンタルサーチが使いたいな。それ以外は必要な機能はあると思うが、人によっては不満も多いかも知れない。けっして高機能ではない。

メール(標準)

 評価が低いメールソフトだが、個人的にはこれも「必要最小限」の機能はあると思う。逆に言えば、単にメールを送受信し読み書きするだけということ。emacs + mewを導入してみたが、これはこれでなじむまで大変そうだな。

日本語入力

 標準のIMも変換効率そのものは悪くない(というかけっこう素直な変換)。しかしキーカスタマイズの類がまったくできないのが痛い・・・。僕はATOKキーに慣れているのと、やはり少々機能が少ないのだ。たとえば半角英数の文字列を入力する場合、最近のPC用IMEなら大文字小文字を気にせず入力して、あとから「全部大文字」「全部小文字」「一文字目だけ大文字」を切り替えられる。でもSL-C7x0標準のIMではそれができないので、入力中にShiftキー押下を意識しなくてはいけない。これはけっこうストレスなんだな。キー割り当ても違うし。
 Justsystemさん、ATOKを出してくれませんか〜。Linux用はすでにあるんだし・・・。

 置き換えIMとしてはQPOBoxやanthyなんてのがあるようだが、前者は予測変換(というか学習偏重型というべきだと思う)でそもそも操作性が全然違うし、後者はキーカスタマイズができるわけじゃないということで、やはりこのあたりは非常にもどかしいのであった。

ソフト環境全般に

 Linuxの資産を活かした(主としてコンソール系、サーバー用途系)のソフトはPDAと思えないくらい充実していたりする(正直驚いた)。しかしPDAとして重要なわかりやすいインターフェースを持ったソフトや小物系のユーティリティはまだまだ発展途上という感が否めない。このあたり、Palm系の状況とはまったく異なるようだ。Palmでは置き換えソフトと呼ばれる、標準のソフトのデータを利用しつつ使い勝手を改善するソフトが多くあり、簡単に使いやすさをアップできる。しかしLunax Zaurusでは、凝ったことができるか必要最小限しかできないか、非常に落ち着かない状況なのである。

 これはPDAのプラットフォームとしての歴史の浅さにもよるだろう。またLinuxに親しんだ人はコンソールでなんとかしてしまうということもあるだろう。  便宜的にユーザーの層を3段階に分けてみると

  1. パワーユーザー(コンソールでばりばり使える人。見栄えにあまり拘らないことが多い。)
  2. ちょっと使いこなしが好きなユーザー(自分でなんとかは難しいけど、提供されているソフトを入れてみたりして、使い勝手を向上させるのは好きだしできる人)
  3. 電子手帳として使えればいいユーザー(与えられた機能を最小限使えればいい人。あまりにひどいのでなければOK)

という感じになろうか(僕は1.と2.の間かな)。SL-C7x0は1.のようなユーザーに訴えるものは絶大である。また付属ソフトも3.のようなユーザーにも対応できる程度の出来ではある。質感の良さはどのレベルのユーザーにも訴えるだろう(バッテリの蓋除く(笑))。しかし2.が弱い。肝心のGUIなソフト環境が充実しておらず、ちょっと使い込むと不満を感じることが多いがそれらの解決策があまりない。一時Clieを使っていた経験からすると、試せる置き換えアプリや小物の多さは、わくわく感というかプラットフォームそのものの魅力でもあるのだが。

 アプリが今ひとつ出そろわない理由はいくつかあるだろうが、1.パワーユーザーはコンソール系のソフトを使いこなしている、2.もともとのLinux文化からソフトはフリーという風潮がある、というところが大きい気がする。後者は、なんとなく有料のソフトを提供しづらい雰囲気となっていることで、ソフト制作のインセンティブを奪っていると思うんだよね。Palmなんか「これで有料?」なんてのも多いが、全体としては選択肢が多くて活発だ。気の利いたユーティリティも多い。

 ともあれ、使い勝手も見栄えもいい置き換えソフト・ユーティリティソフトがどんどん登場して欲しいものだ。Sharpにはぜひそういった活動を積極的にサポートしてもらいたい。

キャビネットの換装

 キャビネットとは筐体のこと。SL-C760の筐体カラーは白が基調で、見方によってはおしゃれ。うちのカミさんは「かわいい〜。どうせすぐに他のを買うんでしょ。そしたらちょうだい!」と曰ったくらいだが、たしかに女性向きのデザインなのかも。ただ、メリハリがないようにも受け取れるし、個人的にはSL-C700のカラーがかっこいいと思っているので、雰囲気を近づけるべく、比較的作業が簡単な液晶型のキャビネットを交換してみた。

キャビネットはシャープのサービスセンターに注文して取り寄せた。ちなみに注文時、「SL-C700という機種はございません」とか言われて、なにをアホなことをともっと調べさせたら、「新しい機種なのでデータベースに入っておりませんでした」と…。発売後1年経っていて新しいも何も無かろうと、ちと苦笑を通り越した出来事だった。
こちらでも購入できるようだ。
基本的に、ねじを外してキャビネットを付け替えるだけ。外すねじは、画面の赤い矢印で示した6本と内部で3本。
まずは横のねじを。ねじは小さいので、外した時に落とさないように注意!僕は2回ばかりカーペットの上に落として探すのに苦労した(苦笑)。
次にキャビネット下面。ディスプレイをひねってねじを外す。ここでもねじを落とすことに注意!
外側のキャビネットが外れる。液晶側を外すには、さらに赤丸で囲んだねじを3本、外す必要がある。
キャビネットが外れた状態。ディスプレイ部は3つの部分に分かれているので、粗雑に扱うと断線を起こしそうで、けっこう怖く心許ない。ゆっくりやれば大丈夫なはずではあるが。
回転部の保護部材(?)を忘れずに付け替えること。
後は逆の手順でキャビネットをはめ、ねじ止めしていけばいい。

 そんなわけで、前後の比較写真は下記。写真では白と銀の差がわかりにくいが、雰囲気はぐっと締まった。また拡張バッテリ用の底面カバーは、予備バッテリを買った時に付属してきた黒のものを使っている。SL-C860風とも言える。

換装前 換装後